大企業ではあまりない話ですが、中小企業ではイチ営業担当が取引先で聞いてきたニーズを商品に反映すべしと、直接商品の開発者やメンテナンス担当者に依頼をかけたりします。しかしこれらの要望を反映したとして、収益性が向上したかと言えば必ずしもそうではなく、開発にかかったコストや労力に見合わないというケースが多いように思えます。何故、そのようなことが起こるのかについて考えてみました。


その1:充分な市場分析が出来るほどのデータを持っていない

これが一番大きいと思います。例えば30件のクライアントを持っている営業マンがいたとして、そのうち3件同じ理由で失注してしまう、若しくはニーズをヒアリングできると、それは高い確率で他のユーザーも同様のニーズを持っていると錯覚しがちになるということです。確かにその可能性はあります。確率で言えば10%ですし、他のユーザーももしかしたら潜在的にそのような要望を持っているかも知れないので、確かに確固たるニーズが存在する可能性があります。
 ですが、この結果のみを見てニーズがあると断定してしまうことは、早計であると言わざるを得ません。全体のマーケットを考えると、一営業マンの主観で判断するにはあまりにも広すぎですし、データ不足なのは否めません。特定のエリアの特定の客層に対してはそのニーズがあるかも知れないが、掛ける費用を上回る収益が見込めない状況に陥る可能性もあり、実際何度か体験しています。まずは可能性の模索ということで調査をすることから始めるべきです。


その2:潜在的には実はそこに顧客が望むものが存在しない可能性

お客様の声というものは非常にありがたいものではありますが、これが本当に商品開発に役立つかどうかは疑問の余地が残ります。自己啓発本でもかなりの頻度で取り上げられていますし、ご存知の方も多いと思いますが、自動車を開発したヘンリー・フォードの言葉に以下のようなものがあります。

もし私が顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らはもっと速い 馬が欲しいと答えていただろう。

顧客の要望を表面的に切り取ってしまうと、潜在的に抱えている“Wants(ウォンツ)”を見逃してしまうということですね。これは充分にいえることです。特に日本のサプライヤーとカスタマーの関係を見ると、カスタマーの言葉に絶対的とさえいえる影響力があるので、顧客自身が気付いてもいない“Wants(ウォンツ)”を見落としがちになるということにも納得出来る話ではあります。もちろん“Wants(ウォンツ)”を探す目的で情報収集を多面的に行うことは有意義なので情報収集を行ってはいけないということではなく、あくまで先入観にとらわれてはならないということです。 

その3:駆け引きの材料として考えられている

大枚をはたいてまで購入をしたくないが、まるっきり興味がないこともない。そういうときに相手の反応を見るために、言い方は悪いですが“ケチ”をつける可能性もあります。要はクリティカルに必要な機能ではなくても、機能の不備によって値下げ交渉を優位に進めたいということなんですが、見に覚えがある人も少なくはないでしょう。
普段提案を掛けている取引先は様々な業者から提案を受けますが、会社の看板を背負って応対している以上、いわゆる社会人らしい態度は必要であり、お断りする場合にも一応理由は伝えますし、興味があって値切りたい場合でも馬鹿正直に安くしてとはなかなか言い出せないというのが通常でしょう。値切りたいときは値下げを要求するのにふさわしい理由を見繕ったりします。特に他社の類似商材にはあって、提案された商品にはなかった場合などは絶好のチャンスともいえます。この場合、相手は本当にその機能を必要としているのではなく、単に少しでも安くしたいだけなのに、機能追加を行って金額を下げずに提案しても相手に刺さらないことは想像に難くありません。きっとそのとき取引先の担当者は、「機能改修をしている間に、競合の商品を導入してしまった」と言って断るでしょう。少なくとも僕ならそう言う。


その4:売れない理由をまず商品に求めることの弊害を招く

善し悪しだと思いますが、プロパーで営業活動を行う企業のうち、商品改良に力を入れる会社と、営業手法に力を入れる会社の二種類が存在し、僕はいくつかの就業履歴のなかでどちらのタイプの会社にも属したことがありますが、いずれも極端だと感じました。
営業手法に力を入れる会社では、当然社内リソースの多くを営業に割いており、商品開発にコストを掛けるより所謂“営業力”向上を考えます。如何に世間とのニーズとずれがあっても、顧客が納得すればよいという発想に基づく営業方針です。
翻って商品改良は、営業のリソースはそこそこに、自社である程度商品開発が出来る体制が整っている場合が主です。これは自社内でコスト部門を抱えているとも言えるため、売れない場合には商品を改良するという発想が先んじます。
これはどちらもスタンス自体は別に悪いことではないと思いますが、極端になりがちであるということは否めなません。営業主体では商品とニーズの乖離にも限度があり、最終的には売るために滅茶苦茶な営業トークをしてきたりすることもありますし、商品改良を主に考えると、売れない理由を営業マン自体が考えることをしないので、いつまでも営業スキルが伸びず、却ってコストばかり嵩むことになります。
 会社としてはどちらもどっこいどっこいのような気もしますが、営業マン単体を鑑みると、営業マンは売り方について知恵を絞るほうが真っ当な気がします。 


いきなりどうした?という内容ですが、思うところがあったのでつい。