昔から言われることですが、この言葉は社会人になってから、切に実感する場面によく出くわすようになりました。学生のときもズルや横着をする者はたくさんいましたが、学業というものが完全に個人競技であるため、真面目に実力を積み重ねてきた者が、最終的に誰にも足を引っ張られずに成果を発揮できる機会が受験という形で用意されていたように思います。学業よりも団体で行う部活動に打ち込んできた者にとってはその限りではないのかもしれませんが。


同僚にAさんという人がいます。彼は人柄もよく仕事もきっちりこなす、真面目人間です。丁寧に相手に配慮して仕事をこなしていくので、他の同僚からの受けもいいみたいです。
ただ不思議なことに、Aさんは余り直属の上司からの評判は良くないようです。

先日こんな一節がありました。僕が今取り組んでいるプロジェクトのドキュメントをまとめているときに、他部署の同僚Bさんが近づいてきて


「去年サイトに載せてたあのコンテンツって今年もやるの?やるとしたら何時ごろ?ちょっとクライアントに提出する資料をまとめたいんだけど」


と聞いてきました。この件は確か別部署が企画して掲載したものだったので、


「あー、あれは確か○○部からの依頼でやったので、そっちに聞いてください。」


とだけ答えて自分の仕事に戻りました。因みにこの部署はかなり気難しいことで知られている人が部署を仕切っていて、苦手意識を持っている人も少なくありません。
Bさんは「とりあえず聞いてみるわ」とだけ言って去っていったので特に気にも留めなかったのですが、10分もかからないうちに、ふと見るとAさんにまったくおんなじ内容の質問を投げかけていました。Aさんとと僕は同じ部署で職掌もかなり近いので、さっきの返答からAさんに質問しにいく必要性など一切ないのはBさんもわかっているはずです。「どうせ同じことしか言われないのに何考えてるんだ?」と考えていると、Aさんが


「ちょっと私もわからないのですが、承知しました。去年の実施概要をまとめて、○○部に今年のスケジュールや内容を打診します。返答が帰ってきたらお伝えします。」


と答えているのを聞いて、さすがに唖然としました。Bさんが聞いてきたのはあくまでBさんの仕事上の都合で必要になるものなので、Bさんが聞くのが筋です。こちらは企画した部署が実施概要を出してくるのを待っていればいいので、あえて打診することに余りメリットはありません。要するにBさんは、面倒くさい人と対応するのを回避するためにスケープゴートが欲しかったということです。


この手のこズルイ考えを持っている人間は僕が想像しているよりも多いと感じました。そしてAさんみたいな人は、たいてい帰る時間が遅いです。作業の効率化や段取りをきっちり仕事をしても、それを鑑みず仕事を振ってくる連中の相手をさせられていることが多く、結果として時間内に終わらないということもしばしば。そして直属の上司からしたら、部としてやって欲しい仕事が他部署の御用聞きの為に遅れていることが我慢ならないようです。


因みにAさんはよく「親切にしてたら返してくれるかもしれないだろ?」といいます。ですが正直返してくれる人は大げさにいってみたことがありません。むしろ要求レベルが上がっているように思えます。ズルをしたがる人間は止むを得ない事情があってずるいことをしているのではなく、そうありたいからズルをするのだ、ということです。

でもまあ、自分も話を遮って「自分で聞いて来い」って言わなかったわけですから、それなりにズルイ人間なのかもしれません。


ここで、教訓にすべきことは以下の4点かと考えています。

  • ズルイ人間には甘い顔を見せてはならない
  • 人の親切に期待をしてはいけない
  • 顔色を伺うべきは自分の為になる人だけに絞る(ここでは上司)
  • ズルイ人間に対抗するためにはある程度自分もズルくならなければならない


 仕事も、学業みたいに足を引っ張られずに実力を評価できるような機会があればいいんですけどね。